[ 政治・経済 ]
(2018/7/29 13:30)
ロシアのプーチン大統領がトランプ米大統領に贈ったサッカーボールが物議を醸している。半分冗談だが、サッカーワールドカップ(W杯)の土産であるこのボールに盗聴器が仕掛けられている可能性があるというのだ。グラム上院議員(共和、サウスカロライナ州)は、「私なら盗聴器がないかボールをチェックし、ホワイトハウスには絶対に持ち込まないようにする」とツイートした。
盗聴の警告は荒唐無稽とも言えないことが分かった。ボールの模様は近くの電話と交信する小型アンテナ搭載の半導体が組み込まれていることを示している。
しかしこの半導体はスパイの道具ではなく、ボールの製造元独アディダスが宣伝している特長だ。ヘルシンキでの記者会見でプーチン大統領がトランプ大統領にボールを手渡した時の写真を見ると、ボールには近距離無線通信(NFC)タグを示すロゴがある。アディダスのウェブサイトによると、NFC半導体は製造過程でロゴの下のボール内部に埋め込まれる。
この半導体の働きでサッカー愛好家はボールに携帯端末を近づけて選手の動画や試合などのコンテンツを視聴できる。この機能を持つ2018年FIFAワールドカップ試合球の販売価格はアディダスのウェブサイトによると165ドル(約1万8300円)。
アディダスは半導体がロシア側のハッキング行為を誘導する可能性があるかどうかコメントを控えた。このようなボールやその半導体にセキュリティー上の弱点があるという意見は出ていない。アディダスのウェブサイトに掲載された製品説明によると、半導体自体に変更を加えることはできない。「符号化されたパラメーターの削除や書き換えは不可能」だという。
ボールのロゴから半導体が入っていることは分かるが、その半導体が除去されて実際のスパイ用機器に入れ替えられたか、またはボール自体が今回のイベントのためにアディダスのモデルに似せて作られたものか、写真からは判断できない。
ホワイトハウスのサンダース報道官は電子メールで「あらゆる贈り物に実施されるセキュリティー検査はこのサッカーボールにも行われた」とし、「セキュリティー上の手続きについてこれ以上コメントしない」と述べた。ホワイトハウスはボール改造が見つかったかどうかやボールの今後の保管場所について言明を避けた。
半導体は「アップル・ペイ」など一部のモバイル決済で使われているものと同じ技術だ。こうしたタグに電話への攻撃を開始させるようにプログラムすることは理論的には可能だ。
しかし、ハンブルクを本拠地とするハッカー集団、カオス・コンピューター・クラブ(CCC)の広報担当者リーヌス・ノイマン氏はサッカーボールを介し複数のステップを踏んだ攻撃は可能性が低いとみている。「トランプ大統領がセキュリティー上の警告を何回も無視し、自身の電話に故意にマルウエアをインストールしなければ」攻撃を受けることはないだろうと語った。(ブルームバーグ)
(2018/7/29 13:30)