[ オピニオン ]
(2018/8/29 05:00)
増え続ける防衛関係費に国民の理解を得るために、適切な説明に努めてほしい。
28日に閣議報告した2018年版防衛白書は、周辺国の軍事活動の活発化が深刻になっている現状を強調した。北朝鮮の核・ミサイル開発については、米朝首脳会談で非核化に取り組むと約束したことを評価しながらも、具体的行動を見極める必要を指摘。「これまでにない重大かつ差し迫った脅威」という現状認識を変えなかった。
また、中国についても「安全保障上の強い懸念」との表現を維持した。その上で、弾道ミサイル迎撃や南西諸島周辺の防衛体制の強化などを説明した。
周辺国の軍事的な姿勢の変化が明確でない以上、わが国が備えを充実するのは当然だ。第一線の部隊の努力には頭が下がる。しかし“脅威”を前面に押し出し、正面装備の強化を訴える白書の構成に、物足りなさを感じないだろうか。
防衛関係費は当初予算ベースで6年連続の増加。間もなく締め切る19年度予算の概算要求額も過去最大となる見込みだ。納税者に対する当局の説明責任は年々、重くなっている。
実際には、予算の4割以上を占める人件・糧食費の増額などデフレ脱却局面では仕方ないものもある。最新鋭のイージス艦や潜水艦を増やしても、人員確保が難しくなっている状況は民間企業と同じだ。女性の退職者の再採用や、予備自衛官の確保に協力した企業に対する給付金など新たな制度もある。
宇宙空間やサイバー空間での海外からの攻勢と、その対抗策も大きな課題だ。自衛隊には小規模の専門部隊があるだけで、備えは十分ではない。これからとるべき措置を、国民に分かりやすく説明すべきである。
昨年来、防衛省の信頼を失墜させた南スーダンやイラクの日報問題について、白書は巻末にまとめを掲載している。再発防止への決意を、巻頭にしっかり明記してもよかったのではないだろうか。
脅威一辺倒ではない予算増の必要性の説明を、今後の防衛白書に求めたい。
(2018/8/29 05:00)