[ オピニオン ]
(2018/9/20 05:00)
待機児童解消の一環として2016年4月に始まった企業主導型保育施設は、17年度末で全国に2597カ所が開設され、5万9703人分の子どもの受け皿ができた。政府は18年度は助成対象をさらに約2万人分増やす方針だ。従業員に働きやすい環境を提供するため、企業には同制度の一層の活用と保育の質向上を期待したい。
企業主導型保育事業は内閣府の主導だ。自治体の認可は不要で、休日や夜間、短時間、週2日のみなど、幅広い利用の仕方ができる。一方助成金は認可保育園なみで、企業負担は施設整備が4分の1(上限あり)、運営費が5%で済む。しかも運営費の中小企業の自己負担は18年度から3%に軽減されている。
50%を上限に「地域枠」として従業員以外の子どもを受け入れることも可能で、運営を安定させやすい。地域貢献として従業員以外の子どもを積極的に受け入れている事業所も多い。18年3月からは「保育園等の入所保留の通知を受け入れていること」を条件に、一時的に50%を超える地域枠の受け入れも認められるようになった。
事業所内の設置は条件ではないが、郊外の工場など土地に余裕がある事業所では“職育一体”が可能。マイカー通勤の保護者にとっては送り迎えがしやすいのも大きな利点だ。必要な時には子どもの様子を見に行ける安心感もある。
実際に企業主導型保育施設を開所した企業では、概ね従業員に好評なようだ。採用活動時にも応募者の同施設への関心は高いという。「従業員を大切にする会社のシンボルにしたい」という企業経営者もいる。
注意したいのは保育の質だ。企業主導型では大きな予算をかけ子どもに快適な環境を提供する施設は多い。保護者に配慮し「安全・安心」は重視されている。ただ、子どもの発達に最も良い保育とは何かという視点も欠かせない。実際の保育は保育サービス会社に委託する場合が多いものの、任せきりでいいのか。今後、保護者や設置者が共に保育の質を考える姿勢を期待したい。
(2018/9/20 05:00)