[ オピニオン ]
(2018/10/25 05:00)
立山連峰が鮮やかな赤色に染まってきた。黒部峡谷の木々も色づき始め、麓は紅葉を楽しむ人々がにぎわう。峡谷沿いを走る黒部峡谷鉄道のトロッコ電車に揺られながら眺めるも良し。その先にある黒部ダムの勇壮な姿に重ねるも良し。
ただ、鉄道の終点から黒部ダムを結ぶ「黒部ルート」は関西電力が水力発電所の保守のための輸送路に用いており、一般客には開放していない。関電はルートの見学会で公募客や得意先を年間5000人ほど受け入れているが、この枠に入れなければトロッコ電車とダムの双方を一度に堪能するようなことはできない。
ルート内には吉村昭が小説『高熱隧道』で難工事ぶりを描いたトンネルや、中島みゆきさんが紅白歌合戦で『地上の星』を歌った現場といった有望な観光資源が眠る。ゆえに富山県庁は関電に一般開放を求めてきた。
そして、ついに両者が2024年度からの開放で同意した。悲願をかなえた富山県。今後は新たな見所をどう集客に結びつけるかが悩みどころだ。
「観光はなにより民間の皆さんがいろいろなアイデアを出して、民間中心でやっていただかないと」と石井隆一知事は語る。道筋は役所がつけた。次は民間の創意と工夫で道を整える番だ。
(2018/10/25 05:00)