[ オピニオン ]
(2018/10/24 05:00)
「為(な)せば成る…」の格言で知られる名君・上杉鷹山の座像が建つ山形県米沢市の松が岬公園。すぐ隣には人絹(レーヨン)の研究開発に取り組んだある研究者の銅像が建つ。つい最近までその存在に気がつかなかった。
市内にある旧米沢高等工業学校(現山形大学工学部)の門をくぐったであろう研究者の一人が秦逸三。銅像の人物だ。1912年(明45)に赴任した秦は、ビスコース法と呼ぶ方法による人絹製造の研究をここで進めた。
神戸の商社、鈴木商店の資金提供を受けて、秦らは人絹の製造技術を磨いた。国産化のめどをつけた18年(大7)には米沢に「帝国人造絹絲」が誕生した。今年創業100周年を迎えた帝人の前身である。
説明によると、秦の銅像は帝人三原事業所(広島県三原市)に長くあったが、2015年に帝人より同市に寄贈されたそうだ。先月、米沢で開かれた「帝人100周年記念米沢イベント」の会場を銅像は見つめていた。
日本における「人繊工業発祥の地」である米沢。先のイベントでは「ツクロウ 次の100年。」を呼び掛けた。果たして100年後にはどんな産業が地域で生まれるのだろう。秦の姿を眺めつつ、ともに考えてみてはいかがでしょうか。
(2018/10/24 05:00)