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[ 医療・健康・食品 ]
(2018/11/9 16:00)
iPS細胞(人工多能性幹細胞)から神経細胞を作り、パーキンソン病患者の脳に移植する臨床試験(治験)を進めている京都大は9日、50代の男性患者への移植を実施したと発表した。iPS細胞から作った神経細胞をパーキンソン病患者に移植したのは世界で初めて。今後、腫瘍ができないかなど安全面を検証する。
京大によると、移植手術後の男性は安堵(あんど)した表情で、手術前と同様に会話や歩行ができるなど経過は良好という。
高橋淳教授らのチームは、健康な人から作ったiPS細胞を神経のもとになる細胞(前駆細胞)に変え、特殊な注射針で脳に移植した。移植した細胞は脳内で神経細胞になり、情報を伝える物質「ドーパミン」を分泌する見込みだ。
京大病院で記者会見した高橋教授は「外科医にとって結果が全てだ。今まで積み上げてきた結果の審判を待つ、厳粛な気持ちでいる」と話した。京大は男性のほかに6人への移植を計画しており、50~60代の患者の募集を続けている。
手術は10月に約3時間かけて行われ、約240万個の前駆細胞が脳の左側に移植された。免疫抑制剤を投与しながら、6カ月後に移植した細胞の定着や腫瘍の有無などを確認し、問題がなければ脳の右側にも移植する。その後さらに2年間、移植片が増殖していないかや、ドーパミンを分泌しているかなどを調べる。
iPS細胞から作った細胞の移植は、理化学研究所が目の難病患者を対象に行った臨床研究に続き2件目。実用化が近く国の基準が厳しい治験は、今回が初めて。治験が成功すれば、チームは大日本住友製薬(大阪市)と連携して製剤としての承認と保険適用を目指す。(時事)
細胞の管理簡単ではない
再生医療に使う細胞作製に詳しい本橋新一郎・千葉大大学院教授の話 人体に移植できる安全性を持った細胞を作るには、ばい菌の混入や遺伝子の傷などがないか、全ての工程で膨大なチェックが必要で、品質管理は簡単ではないと考えられる。多くの人手や態勢が欠かせず、挑戦的な取り組みだ。一般の治療として普及させることを考えると、品質管理にかかるコスト低減も必要で、一つ一つ調べなくても安全な細胞を作れる手順を確立することも、ポイントとなるのではないか。(時事)
投与は大きな一歩
iPS細胞を使った脊髄損傷治療を研究している中村雅也慶応大医学部教授 患者に投与したのは大きな一歩だ。脳と脊髄の違いはあるが、iPSを使った臨床応用に取り組む者として極めてうれしく、励みになる。患者や国民の期待も大きいと思うが、第1例目ということでまずは安全性が重要。腫瘍ができないかなどを検証しながら2例目、3例目に取り組み、手応えをつかんでほしい。情報を共有し、われわれの研究も進めていきたい。(時事)
(2018/11/9 16:00)