[ エレクトロニクス ]

18年超モノづくり部品大賞/モノづくり日本会議共同議長賞 ローム

(2018/12/3 05:00)

超高速パルス制御技術「Nano Pulse Control」搭載 電源IC

  • 「Nano Pulse Control」搭載の電源ICを実装した基板

【小型化が可能】

電気製品に必ず使われている電源ICは、入力電圧を適切な出力電圧に変換する。ハイブリッド車(HV)など車の電動化が進む中、高電圧電源を使い、車載部品の駆動に必要な低電圧の電力を供給する需要が高まる。高電圧を低電圧に変換する降圧は従来、複数の電源ICが必要だった。ロームは1個の電源ICで降圧する超高速パルス制御技術「Nano Pulse Control」を開発。電源システムの小型化も可能になった。

電源ICの究極の命題は二つ。より高い電圧に耐えられる高耐圧と、素早く電気信号を切り替えられる高周波だ。これらを実現する課題がスイッチング電圧のパルス幅だった。

「“世界一”を目指した」と話すのはLSI開発本部先行電源技術開発部の立石哲夫部長。同技術の開発に着手した2016年当時、ロームはパルス幅に関して競合他社に後れを取っていた。2メガヘルツ(メガは100万)の高周波で動作するパルス幅は、同社が120ナノ秒(ナノは10億分の1)に対し、競合は80ナノ―30ナノ秒。顧客から指摘を受けることもあり、「それなら極限まで短いパルス幅にしよう」と方針を決めた。

【省スペース化】

開発の結果、パルス幅は同社従来品の10分の1以下に当たる9ナノ秒となり、世界最小を達成した。17年には同技術を搭載した電源ICを製品化。60ボルトの高電圧から一気に2・5ボルトの低電圧まで降圧が可能になった。実装面積は従来構成比70%減と、省スペース化にも貢献できる。

パルス幅を短くするには、スイッチング時に発生するノイズが問題となる。ノイズに隠れず、信号を正確に捉えるにはパルス幅を長く取る必要があった。ロームはノイズが発生する前の情報を検知する制御方式を採用。短いパルス幅でも対応できるようにした。

【差別化進める】

同社は超高速パルス制御技術を武器に、電源ICの差別化を進める。汎用電源LSI商品開発部の福本憲一統括課長は、「真価を見せることができた」と胸を張る。同技術を搭載した電源ICの需要は車載分野の中でも、先進運転支援システム(ADAS)やデジタルメーターなどで急速に高まる。福本統括課長は「引き合いが多く人員が足りない」と、うれしい悲鳴を上げる。(京都・日下宗大)

(2018/12/3 05:00)

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