[ オピニオン ]
(2019/1/1 05:00)
新年おめでとうございます。平成最後の年。皆さまの初春はいかがでしょうか。厳(おごそ)かにすがすがしく迎えた元日。めでたいと思い、何となく新鮮な気分になる。神仏に掌を合わせ、1年の計りごとをする発心(ほっしん)の日でもある。だが、年始の決め方にはさほど意味はなかったそうだ。かつてのバビロン暦は春分のころ、フランス革命暦は秋分が年始。太陽暦でも元日ありきではなかった。宗教会議で復活祭から逆算して決めたのだという。歴史が流れ、節目の日を言葉と文字が装飾していった。文字は本になり、本を読み、考えることの贅沢(ぜいたく)が徐々に広がり季節を分けた。「一生の間に感動する書物を、片手の指ほど入手できたら最高の幸福人」と言ったのは、ヘンリー・ミラー。大都市にも静寂が戻り、時が止まる正月。暦の並びが良く大型連休の人も少なくない。日ごろ、ネット社会にどっぷり浸(つ)かり、情報過多に冒されている脳を活性化する絶好のチャンスでもある。これを生かし、深い感銘を授かる1冊に出合えば、生涯大きな影響を受けることになる。春秋子も、本を片手に招福酒の海に溺れるか。その後は、いつもの寝正月。そして見る初夢は〈何となく ことしは良い事 あるごとし〉(啄木)。
(2019/1/1 05:00)