[ オピニオン ]
(2019/1/17 05:00)
実践的な高等教育を手がける専門職大学・専門職短期大学の制度が2019年度から始まる。しかし設置認可のハードルが高く、新規参入を目指す多くの学校法人が苦戦した。力不足と切り捨てるのではなく、文部科学省側も理解を深める努力をし、新制度を定着させてほしい。
専門職大学などの申請者の多くは専門学校を経営する学校法人だ。福祉など社会ニーズに応えてきたものの、学生の活躍後押しのためにも大学への転身が悲願という法人もある。ただ、初年度組の当初申請16校に対し認可は3校。大多数が取り下げざるを得なかった。
大きな要因の一つは、文科相の諮問機関で、設置基準への適合を議論する「大学設置・学校法人審議会」が求めている内容が、部外者には分かりにくいことだ。例えば、大学では「養成する人材像を明確にする」ことがきわめて重要で、専門職大学はそれに基づく「展開科目」がポイントとされる。
求めているのは卒業生を送り出す当該分野の産業界の人材ニーズ把握だが、これは現状に留まらない。ITや人工知能(AI)の活用、新産業創出のビジネス提案など、変化する未来社会を想定した実践的な能力というニーズだ。
これに向けた教育手法は通常の大学でも確立の途上にある。まして大学経営の経験がない申請者は、この内容を把握しきれないまま、専門学校教育の延長で科目を設計したと見られる。審査の主体は審議会とはいえ、苦闘する法人と接する文科省関係者にも、理解を促す努力をしてほしい。
学術研究を重視する既存の大学と異なり、現場からイノベーションを起こす高度な職業教育の大学という意議は大きい。20年度開設に向けた申請は再挑戦組も含めて20校。法人の意欲は幸いなことに落ちていない。
農業の6次産業化に向けた農業大学校転換で、申請者が静岡県という注目例も出てきた。観光など国として重要な新分野の設計もある。初年度の課題を糧に、新制度のレベルを高める努力を関係者に期待したい。
(2019/1/17 05:00)