[ オピニオン ]
(2019/2/26 05:00)
投資家が企業に対し、気候変動で想定される被害の開示を迫っている。数十年先、豪雨や猛暑などの激しさを増した異常気象から、どのような影響を受けるのか、こうした将来の気候変動リスクの開示を求めている。
2015年末、温暖化対策の国際ルール「パリ協定」が採択されると、気候変動を議論する顔ぶれが変わった。政府、NGO、企業に加え、投資家も登場した。国内も環境関連のシンポジウムがあると、世界最大の年金基金の年金積立金管理運用独立法人(GPIF)など機関投資家が登壇する機会が増えた。
年金基金は、株式を保有する企業が気候変動の打撃を受けて配当してくれなくなると、年金支給に支障が出る。投資家も損害を受けるため、リスクを知る必要性が出てきた。
例えば食品メーカーは、干ばつで作物の収量が減ると原料を思うように調達できなくなる。損害保険会社は自然災害の増加で保険金の支払いが増えると、経営が圧迫される。こうした情報開示の世界標準となるのが、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言だ。主要国の中央銀行や財務省が参加する金融安定理事会が設立したTCFDが17年、企業財務への気候変動の影響を予測、開示する提言をまとめた。日本の金融庁や主要銀行が提言支持を表明している。
企業には誤解を避けようと不確実なリスクの公表を控える傾向がある。しかし投資家は、リスクを公表した企業は気候変動を経営問題として認識し、対策も考えていると評価する。逆にリスク情報がない企業は意識が低く、異常気象に対処できないと見なされる。
日本企業は環境貢献の情報は積極的に発信するが、リスクの公表は少ない。しかも将来を想定した情報となるとわずかだ。
将来の事業環境の検討は、長期戦略を考える意味でも有効なはずだ。リスクが顕在化する前に対策を打てば、持続可能な成長につながる。投資家からの評価のためだけでなく、自社の事業継続のために将来リスクを検討してほしい。
(2019/2/26 05:00)
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