[ オピニオン ]
(2019/2/28 05:00)
受験シーズン真っただ中。学問の神様を祀(まつ)る全国の天満宮は合格祈願の絵馬が鈴なり。ほっこりと咲く梅の花とのコントラストがこの季節の風物詩。
〈東風(こち)吹かば 匂い起こせよ梅の花 主なしとて春な忘れそ〉。政敵の策謀で菅原道真が九州・太宰府に左遷された際に詠んだ歌だ。遣唐使の影響で当時の貴族は庭に梅を植えて花見を楽しんだ。
梅のライバルは同じバラ科の桜。奈良時代の和歌をまとめた『万葉集』には梅を詠んだ和歌が約110首、桜の和歌が約43首。が、平安時代に編集された『古今和歌集』では梅が約18首、桜が約70首と逆転する。
主役交代のきっかけは平安「三筆」の一人・嵯峨天皇の一言。牛車で行幸した際、東山の地主神社の満開の桜に心を奪われ、桜を献上させて日本初の桜の花見を行った。その後、御所の庭の「左近の梅」が桜に植え替えられて現在の「左近の桜」「右近の橘」の姿に。
道真は桜も別れの歌を詠んだ。〈桜花 主を忘れるものならば 吹き来む風に言づてはせよ〉。桜は梅のように太宰府に飛ばなかったようだが、遣唐使廃止を建議した道真は案外、外来種の梅より日本自生の桜が好きだったかも。受験生にとっても「サクラサク」の方が好きに違いない。
(2019/2/28 05:00)