[ オピニオン ]
(2019/3/18 05:00)
米中が知的財産をめぐって激しい交渉を繰り広げている。一方、日本は政府が掲げた「知財立国」の看板が風前の灯火(ともしび)になりつつある。その実現には、ベンチャーや中小企業向けに、知的財産の推進を促す発想や仕組みづくりを加速させていく必要がある。
政府が「知財立国」を宣言したのは、2002年。特に特許や商標は、国の産業競争力を左右すると言っても過言ではないからだ。しかし、現状は厳しい。かつては世界トップを誇っていた日本の17年の特許出願件数は約32万件で、中国の4分の1以下で、米国のほぼ半分に過ぎない。また、08年―15年の各国における国外からの特許出願件数を見ていくと、各国とも増加傾向なのに対し、日本のみがリーマン・ショック以前の出現件数を回復していない。
質の面でも、世界の研究者に引用される影響力の高い論文シェアが、04―06年は平均で世界4位だったが、14―16年は同9位に下がった。知財訴訟も、中国は年間約13万件なのに対し、日本は約500件にとどまる。
現状を打破していくには、三つの視点からの改革が重要だ。まず、金融面だ。知財に精通した鮫島正洋内田・鮫島法律事務所代表弁護士は、産業構造審議会(経済産業相の諮問機関)の中で、「中小企業の知財に着目した融資を進めていく必要がある」と強調する。中小企業は知財で金融機関から資金調達したいというニーズがある。一方、中小企業は「知財は金融機関から財産として評価されていない」(有力中小企業社長)との声も多い。ただ、多くの金融機関は知財を評価できる専門的人材が不足しており、金融機関が知的財産と事業の双方に精通した人材育成が不可欠だ。
第二に、教育面の視点だ。国際性や海外との競争に触れるような大学でのカリキュラムを取り入れ、ベンチャー精神を醸成していく仕組みが求められる。
最後に、より使いやすい特許訴訟制度の整備が必要だ。独自技術を守りながら、他社の権利を侵害しないという知財意識を高めることにつながる。
(2019/3/18 05:00)
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