[ オピニオン ]
(2019/3/27 05:00)
東京理科大学の日比野浩典准教授らは複数の作業者がコンベヤーの前に並んで部品を組み付ける工場の生産ラインで、生産効率を最適状態に保つにはどのような対策が必要かを算出するシミュレーターを開発した。特に離職率が高い海外工場での有効なツールとなりそうだ。
内閣府の調査では海外生産を行う上場企業の割合が1989年に34・2%だったが、2017年には70・7%になった。全生産高に占める海外生産高も3・2%から23%に増えた。しかし、海外生産には離職の問題が付きまとっている。
大手自動車部品メーカーによると、日本の工場では定年退社を除く離職率は年間を通して限りなくゼロに近い。一方、海外工場では、2―10%の比率で離職が発生している。
日比野准教授らは離職率が高い海外工場で、離職に対してどのように対応すれば生産効率を落とさずに生産を継続できるかを明らかにした。海外では、例えば「1カ月後に退社する」と事前申請、直前に退社を申請、黙って出社しなくなるという3パターンがあるそうだ。
例えば、何人かでラインを構成して1人が40秒で作業する場合、部品は40秒に一つずつできあがる。ところが、誰かが離職した場合、代替者が入るものの、代替者が不慣れな場合、60秒かかったとすると、そのラインでは60秒に一つずつしかできず、ラインの全員の残業が必要になるわけだ。
かといって、あらかじめ代替者を何人も雇用してスキルをつけさせておくにはコストがかさむ。そこで、シミュレーターに1カ月ごとの離職者の数と離職の仕方、代替者の属性(作業の習熟度や年齢)などのデータを入力すると、離職の仕方による影響や必要な代替者の数、教育に必要な時間などのデータが得られる仕組みだ。
多くの企業が日本とは勤労意識の異なる海外で生産する時代、国内と同じ方法では十分に生産性を上げられない工場もあると思われる。こうしたシミュレーターを活用するのも一つの方法かもしれない。
(2019/3/27 05:00)