[ オピニオン ]
(2019/4/3 05:00)
大学の学術・基礎研究は実社会への波及効果が明確でない一方、特殊な実験装置が必要などの悩みが多い。日本の研究力に厚みを付けるためには、共同利用・共同研究の仕組みの利用を促すべきだ。
加速器や大型望遠鏡など高価な装置を特定の研究機関で所有し、その装置を利用したい研究者を広く受け入れて、共同利用・共同研究する仕組みは大きく二つある。一つは「大学共同利用機関法人」の4法人17機関(研究所)の活用だ。
高エネルギー加速器研究機構や国立極地研究所など、各研究機関は知名度もある。同法人は国立大の仲間で、運営費交付金削減に対応した運営効率化や、学際研究推進を目的とした再編計画も進んでいる。
もう一つは「共同利用・共同研究拠点」制度だ。これは旧帝大の付置研究所などが同拠点としての認定を受け、他大学研究者を受け入れるものだ。どちらも個々の研究者の豊かな発想に基づくボトムアップの学術研究を支援し、各分野の研究コミュニティーを支えている。
しかし残念なことに、これらの仕組みや意義は一般にほとんど知られていない。利用する研究者グループも偏りがある。例えば法人の一つ、自然科学研究機構の2016年度利用実績は、国立大が約4700人、外国機関所属が約4100人。最多は東京大学の約800人で、研究型大学が上位に並ぶ。一方私立大学は約1000人。若手をはじめ「どうやって利用するのか分からない」との声もある。
日本の研究力の問題の一つに、論文など成果が一部の研究型大学に偏り、中間層の厚みが薄いことが挙げられる。政府戦略に沿ったトップダウンの競争的資金は、研究型大学とそれ以外の格差拡大に作用しがちだ。
それだけに地方大学や私立大学を含め、すべての研究者の本質的な意欲に応えて、層を厚くする学術研究推進は重要だ。研究費支援では科学研究費助成事業が力を発揮する。同様に研究環境支援では、共同利用の仕組みをより浸透させることを、関係者に強く意識してほしい。
(2019/4/3 05:00)
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