[ オピニオン ]
(2019/4/2 05:00)
日本の景気が足踏み状態を続ける中、発表される経済指標は後ろ向きな内容が多く、新年度入りとともに景気後退の可能性が大きくなってきた。景気後退を食い止め、回復基調を取り戻すためには何が必要なのだろうか。
政府は昨年来、「景気は緩やかに回復している」との景気認識を崩さず、今年1月には景気回復期間が“いざなみ景気”の73カ月を抜き、「戦後最長になったとみられる」(茂木敏充経済再生担当相)としていた。しかし、その後発表された景気動向指数が3カ月連続で悪化したことで景気回復に疑問符がつくに至った。
3月の月例経済報告では、政府は従来の景気認識に「輸出や生産の一部に弱さがみられる」との文言を追加し、景気判断を3年ぶりに下方修正した。
また、日銀が1日に発表した全国企業短期経済観測調査(短観)では、代表的な指標である大企業製造業の業況判断DIが大幅に悪化した。さらに先行き判断DIは一層の悪化を見込んでいるため、景気後退の可能性が一段と高まった。
景気が回復から後退へ基調を変化させようとしている最大の要因は中国経済の減速にある。加えて欧州経済の不振や米中貿易摩擦により新興国経済が冷え込んできたことで、わが国の輸出と生産が大きく落ち込んだ。
これに対して、日銀短観で明らかになった2019年度の設備投資計画は、前年度比1・2%増と小幅ながら増加しており、企業の設備投資意欲は引き続き根強い。また、3月末に発表された2月の鉱工業生産指数は4カ月ぶりに上昇しており、設備投資を主因として景気回復が期待できる状況にある。
このため、企業は好調な企業収益を生かして、賃上げや設備投資を活発化し、体質強化を図って生産性、収益性をさらに向上させてほしい。政府は規制緩和や成長戦略を推し進め、企業の生産性向上を後押しすることが必要だ。それが経済の好循環を生むとともに、景況感を改善して、景気回復につながるだろう。
(2019/4/2 05:00)