[ オピニオン ]
(2019/4/19 05:00)
東芝が米国液化天然ガス(LNG)事業の売却計画を白紙に戻した。売却予定だった中国ガス大手のENNグループから株式譲渡契約の解除を求められており、これを受け入れた。経営的に難しい判断だが、ENNと出口の見えない交渉を続けるより、早期に新たな売却先を探す戦略に転換したのは賢明といえるだろう。
経営危機を脱したばかりの東芝にとって、含み損を抱えたLNG権益をどうするかは残された大きな課題だ。しかしENNとの契約解除が伝わって以降、一部報道や株式市場で飛び交った「最大1兆円の損失発生案件」との見方は妥当ではない。
東芝が20年間の権益を持つLNGが、まったく売れなければ巨額の損失を計上せざるを得ない。だがLNGには世界的な需要があり、スポット取引も活発だ。将来のエネルギー価格の変動も考えれば、現時点での「最大1兆円」という数字には不安をあおるマイナスの効果しかない。かつての子会社で2015―18年の経営危機の主因となった米国原発大手のウエスチングハウス(WH)の記憶がまだ新しいことも、市場が過剰反応する素地かもしれない。
一方で、東芝が目指す19年度中のLNG事業撤退がたやすいわけではない。東芝は、もっとも好条件を提示したENNに対し、8億600万ドル(約900億円)の一時金を支払うことで株式譲渡契約を結んだ。アジアのLNGスポット価格は3年ぶりの安値水準にある。新たな売却交渉では、より高額の一時金を求められそうだ。
加えて事業規模も「六本木でビル10棟を一遍に買うようなもの」(関係者)とされ、売却先の候補は限られる。相手先には資金力のある中国企業が浮上する可能性が高いが、同じ轍(てつ)を踏まないよう、条件を詰める必要があろう。
東芝が本業への集中を進める方針である以上、LNG事業の売却は避けて通れない。一時的な損失の拡大も懸念されるが、ずるずると長引いて傷口を広げるドロ沼化は、市場からも評価されない。
(2019/4/19 05:00)
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