[ オピニオン ]
(2019/4/22 05:00)
デジタル革命の波は産業界の景色を一変させた。起爆剤となったのはインターネットによる情報革命で、わずか30年余で世の中を変えた。わが国では、インターネットの普及はパソコン通信から始まり、通信網の大容量や端末の多様化を背景に2000年初頭に“情報爆発”を引き起こし、ビッグデータ(大量データ)時代の幕開けを告げた。デジタル革命に至る変せんは丸ごと平成時代に重なる。
平成元年(1989年)は、わが国の「通信自由化」が緒に就いたころ。巨大ビジネスをめぐる覇権争いが繰り広げられていた。80―90年代にかけ、各国の電気通信事業に競争原理が導入されたのが背景。わが国も新規参入業者が群雄割拠していた。
振り返ると、産業界が描く情報化社会の未来像は昔も今も大きくは変わらないが、競争条件は様変わりした。かつては、自前で設備を持ち、伝送路がどこを通っているかが競争力の決め手だった。わが国の通信の自由化は、国際、長距離、市内に分け、それぞれに新規参入が認められた。だが結果として、サービスがサイロ化してしまい、その後の市場変化に追従できず、新規事業者が描いた巨大ビジネスの夢の多くはついえた。
一方、インターネットは別の進化を遂げていた。米国では90年初頭に全米のコンピューターのすべてを光ファイバーなどで結ぶ「情報スーパーハイウエー構想」が打ち上げられ、中核をインターネットが担っていた。
インターネット革命は通信網の高速・大容量やITの大衆化などと相まって、通信事業とも融合し発展を遂げ、現在に至っている。注目は競争の土俵が大きく変わったこと。「伝送路を持つ、持たない」ではなく、データを経営資源として新たな収益を生み出すことにシフトした。00年に入って通信事業者に代わり、主役の座に躍り出たのは米アマゾンなどの巨大プラットフォーマーだった。
デジタル革命を勝ち抜くには、利権を争うコップの中の争いはなく、世界を見据えたグランドデザインが必要。平成時代の教訓はそれを物語っている。
(2019/4/22 05:00)