[ オピニオン ]
(2019/5/24 05:00)
江戸幕府の「鎖国」政策はどう評価したらよいのだろうか。キリスト教徒が豊臣政権、江戸幕府による国内統治によって、不安定要因として認識されるようになっていった。
三代将軍家光の時代には、キリスト教徒を核とする大規模な民衆反乱「島原の乱」が起きる。そうした騒乱の芽を摘んで、天下泰平(たいへい)を享受するための政策だ。戦争のない時代が長く続いたという意味で、ポジティブに評価できる。
ただ、日本が鎖国をしている間に、欧州は産業革命の時代を迎え、軍事や航海分野での科学技術で決定的な差がついてしまい、ペリーの黒船にいきなり今日の東京湾に侵入されても為(な)す術(すべ)がない。こうなったのは、国を閉ざして近代化を怠ったというツケという見方もできなくはない。そうなると、鎖国の評価はネガティブになる。
また、もし鎖国せず、西洋文化を適宜、日本に流入させていたら、内にこもって熟成した、歌舞伎も浮世絵も、今に残るようにはならなかったとも言える。
物差しを変えると、評価は変わっていく好例だ。経済を見るのか、文化や政治を見るのか。見方を変えれば、いくらでも変わる。限定的な話としてはみんな正解と言える。一つの物差しを信じすぎてはいけない。
(2019/5/24 05:00)