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(2019/6/13 05:00)
航空機産業のサプライチェーンは、国際間競争の激しさが増している。アジアの成長とともに今後20年間で民間航空旅客需要は年平均4.5%増、約3万3000機の新規納入が予測されるなどを背景に、世界各地で航空機産業の振興に強い関心が寄せられている。新素材の加工、電動化や自動化対応といった技術課題に日本のモノづくり力を発揮し、世界と戦えるか、実力企業による取り組みに注目が集まる。
小型機・中型機のトレンド続く
1月、米ボーイングが発表した民間機納入機数は過去最高の806機(2017年は763機)に達した。仏エアバスも、カナダのボンバルディアの小型機シリーズをグループ傘下に収めたことなどで、それに迫る過去最高の800機(同718機)を納入した。
ボーイングはその後、受注の主力だった小型機「737MAX」が相次ぎ墜落事故を起こし納入を見合わせていることから、今年の数字は大きな影響を受けるとみられる。ただ中長期的には、LCC(格安航空会社)の台頭などで小型機や中型機を中心にした市場成長のトレンドは続く。2社の激烈な受注競争から生じる販売価格の下落傾向は、協力企業への強いコストダウン要請となり日本企業も対応が迫られている。
軽量化やコストダウンを実現する上でさまざまな生産や加工の新技術の導入や対応が進んでいるが、その一つが3Dプリンターの活用。機械加工で行われていた部品製造に対して、金属3Dプリンターを使ってアディティブ・マニュファクチャリング(積層造形)で行う手法で、生産体制構築に向け各社で検証が進んでいる。
またエンジン部品加工では重量の軽いチタンアルミや耐熱材合金といった難削材の加工技術が求められるようになっており、日本の中小企業が安定した加工技術を提案し、受注を獲得した事例なども生まれている。
大手重工での勤務経験から航空機産業向けアドバイザーを手がけるエアロ・サプライチェーン・コーディネーティングの川合勝義氏は「材料、成形方法など新技術が次々と生まれるなか、コスト競争力と確実なマネジメントシステムによる品質の強化で提案力を増すことが強いサプライヤーとなるためのカギ」と指摘している。
周辺機器も品質管理徹底
航空機産業ビジネスに関わるには品質マネジメント規格の取得や維持はもちろんのこと、高い技術力だけでなく、高度な生産管理や品質管理の徹底で信頼性を担保することが重要となる。それは機体製造だけでなく、飛行機にかかわるあらゆる周辺機器にも及ぶ。
堀口エンジニアリング(東京都渋谷区)は、航空機の整備に使う機器類の製造やメンテナンスを手がけ、海外のエンジンメーカーや整備器材メーカーとも積極的に連携し、存在感を高めている。
4月、同社成田工場(千葉県成田市)内で航空機の点検や修理時に機体を持ち上げるためのジャッキ専用試験棟が稼働した(写真)。荷重200トンまでかけられる油圧試験装置を整備し、中型機から大型機までのジャッキ性能試験に対応する。
同社は2013年にグランドサポート器材で世界大手の独ハイドロと航空機器材の国内販売代理店契約を締結した。ハイドロ製ジャッキのメンテナンス需要が増える中、作業者のスキルを生かしメンテナンスを行った後、自社内で試験が行え信頼性を担保する。従来はメンテナンス後のジャッキをドイツまで送る必要があり、多大なコストと時間がかかっていた。
同社は他にも米エンジンメーカーのプラット・アンド・ホイットニーと、エアバスのヒット機「A320」シリーズなどに搭載されるエンジンの整備用スタンドに関するライセンス契約を結ぶなど、海外メーカーとの協業を積極的に仕掛けている。
(2019/6/13 05:00)