[ オピニオン ]
(2019/6/18 05:00)
経営基盤を担うITシステムが旧態依然としたままではデジタル変革(DX)時代の競争に立ちゆかず、多大な損失をもたらす。経済産業省はこうした事態を「2025年の崖」として、警鐘を鳴らしている。DXへの対応は大企業のみならず、中堅・中小企業にも関わる経営課題であり、人ごとではなく“自分ごと”として捉えることが必要だ。
2025年の崖は経産省がまとめた「DX(デジタル変革)レポート」の中軸となるメッセージ。「レガシー(遺産)」と称される老朽化したITシステムがDXの弊害となり、25年以降、日本全体で年間最大12兆円(現行比3倍)の経済損失をもたらすと指摘している。
従来型システムは、事業部門ごとに構築され、全社横断的なデータ活用ができなかったり、過剰に作り込んでいたりすることが多い。DXレポートでは、システムの複雑化やブラックボックス化が要因となり、25年には維持管理費が企業のIT予算の9割以上を占めると予測。保守運用の担い手不在を加味すると、サイバーセキュリティーの災害やデータ滅失などのリスクの高まりも懸念される。
一方、産業界を見渡すと、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)などの実証実験が至るところで行われ、デジタル化の波は着実に広がりつつある。もはやAIやIoTなくして「攻めのIT」はあり得ないが、これらはいわば飛び道具であり、それのみで大きく稼げるわけではない。
IT投資も月額利用のクラウドサービスの登場により、以前とは様変わりしているが、すべてがクラウド化するわけではなく、現状維持という企業はまだ数多い。企業の競争力を高めるには、本丸の基幹システムの刷新抜きには語れず、DXへの取り組みをいかに経営の意思決定につなげるかがカギとなる。
新たなデジタル技術にいち早く対応できる企業と、人ごとのように手をこまねいている企業では大きな差が生じる。すべての経営者がDXを自分ごとと捉えるべきだ。
(2019/6/18 05:00)