[ オピニオン ]
(2019/7/1 05:00)
日本郵政グループの日本郵便が通常はがきや手紙の土曜日配達の廃止を総務省に要望している。理由はもちろん人件費の削減である。日本郵便は通常はがきの料金を2017年6月に62円に値上げした。「ドル箱」の年賀はがきの料金も19年用から同額に引き上げた。それでも減少傾向が止まらず、近い将来赤字転落が見込まれている▼江戸時代は通信や運輸は民間の「飛脚」が独占。幕府や大名の公的な飛脚便も財政難から次第に民間にアウトソーシング化した。明治になっても東京―京都間におよそ毎月43回の早飛脚が往復していた▼それならば、毎日一定の時刻に大阪までの定期便を仕立てることができるではないか。そう考えた前島密(ひそか)は各地の庄屋や豪農に頼み込んで郵便局を設置してもらい、わずか1年で全国ネットワークを構築する。いわば、国による「民活」だ▼明治8年には庶民のお金を預かり、国家インフラ構築に活用する手段として国営貯蓄銀行「郵便貯金」を立ち上げ、鉄道や電信・電話、大学、新聞など新時代を見据えた数々のプロジェクトにかかわっていく▼今年は前島翁没後100年に当たる。「官でも民でもいい。時代を見据えた構想力を持て」と諭している気がする。
(2019/7/1 05:00)