(2019/8/7 13:00)
日立システムズの保守・保全サービス
日立システムズがITの運用知識を活用した製造現場向け保守・保全サービスに力を入れている。業務プロセスの見える化や製造ライン周辺のIT化、部品の交換など現場や業務の運用課題をITで包括的に解決する。製造業でもIoT(モノのインターネット)の普及が進む中、現場に適したITの知識を持つ技術者を育成・投入することで、製造現場のデジタライゼーションを実現する。
属人化からの脱却
日立システムズはこれまで顧客の情報システム部門と連携してITサービスの運用・監視・保守などを展開してきたが、ランニングマシンやランドリー機器、太陽光発電設備などの保全・維持管理に事業を拡大している。
ここにきて特に力を入れるのが製造現場の保全だ。保守事業推進本部新事業開発推進部の西山隆部長代理は「これまでメーカーの立場から見たIT機器保守の視点を、お客さまの課題を共に解決する視点に転換する。製造現場の課題にわれわれのITの知見を融合することで新たな価値を創造できる」と話す。
例えば、製造現場では突発的な故障が起きるとラインが停止するが、ただ修理すればいいという話ではない。復旧だけでなく要因を把握する必要がある。日報を紙ベースではなくデジタル化していれば、過去にさかのぼって故障までの周期や原因を把握でき、今後の予測にもつながる。また、予備品や部品の処理フローも同様にデジタル化が進まず、手配ルールが属人化している場合も少なくない。
日立システムズでは24時間365日、金融や社会インフラ、公共、製造・流通業などの重要なシステムを監視・保守してきたノウハウがある。このスキルをITの導入が進む生産設備に応用し、保全・維持管理代行を進める。西山部長代理は「勘や経験値ではなく、マニュアルの作成や標準化が可能。お客さまは本業に力を入れることができる」と語る。
顧客との信頼関係
単なる技術教育だけではなく、マナーにも配慮した人材育成によるサービス提供が日立システムズの特長だ。50年以上のIT機器保守で培ったサービス活動に関する心構えをまとめた「ガイドライン」に基づき、エンジニアは職務を遂行する。ガイドラインには1カ月間で一巡する「31か条の標語」を記載している。1日1項目を唱和することで、慣れや緩みを排除する。具体的にはあいさつ、規則・規格とこれまで培ったノウハウを盛り込んだ基本動作をはじめ、実際の作業においては養生テープやシートを活用して作業空間と通行部分を分けるほか、安全靴や保護ゴーグル、冷房服の着用などを徹底する。産業・流通プラットフォーム事業部の堀口真也主任技師は「古風だが大切なこと。基本を徹底することでお客さまに迷惑をかけないことは当然として、信頼関係が醸成され情報共有ができる」と話す。
サービス分野拡大
問い合わせの一括受け付けや予備品管理、契約代行といったアフターサービスにも力を入れている。同社はコンタクトセンター(コールセンター)やロジスティクス機能も持ち合わせるため、設備が故障した場合にも契約している機器メーカーそれぞれへの連絡を一本化したり、予備品の保管や配送を行ったりできる。顧客はメンテナンス費用として予算を計上することで、急な故障の際にも新たな予算確保を行わず対応が可能になる。
日立システムズが目指すのはアフターサービスから顧客業務を理解し、設備の可視化や現場作業代行などプレサービスも提供していくことだ。棚卸しによる現物確認や資産台帳をデジタルの力で実施し、業務プロセスや保全コストを見える化する。また、ゆくゆくはデータ分析や改善、最適化など事業の効率化を一元的に提供することで、製造現場の工数削減や業務負担軽減、働き方改革の実現を支援する。
(2019/8/7 13:00)