[ オピニオン ]
(2019/8/26 05:00)
神戸にある理化学研究所のスーパーコンピューター「京(けい)」が、今月末に稼働を停止する。2012年9月の稼働開始直後に京を見学した時に、赤い筐体が整然と並ぶ美しさに見とれたことを思い出す。
一時は世界最高の計算速度を誇ったが、現在は米国、中国の後塵(こうじん)を拝している。ただ、7年間の稼働中に産学による利用が盛んに行われ、がんの新治療法の発見や原子の配列から新材料を導きだす手法、都市地震災害の詳細なシミュレーションなどさまざまな成果を生み出した。
京は今後解体され、同じところに次世代スパコンの「富岳(ふがく)」が建設されることが決まっている。富岳は京の100倍の計算速度を目指し、世界トップに再びチャレンジするという。
理化学研究所は、富岳という名称について、日本最高峰の富士山の高さが性能の高さを、富士山の裾野の広がりがユーザーの広がりを表すと説明している。
ただ、世界の計算速度競争は苛烈を極め、トップに立ってもすぐにその座を奪われる。“高さ”を競う意味は薄れている。富士山の雄大な姿のように、より多くの利用を促し、世界の課題解決に貢献する裾野の広がりで、世界トップの地位を長く保つことに力を注いでほしい。
(2019/8/26 05:00)