(2019/11/18 05:00)
アルミニウムは軽量で加工しやすく、リサイクル性に優れている上にさびに強いという特性を持つ。その性質から家庭用雑貨などの生活用品をはじめ、構造材、航空機や車両などの輸送機器など、我々の生活のあらゆる場面で活躍している。また熱伝導性も高く、機器の放熱素材としても使用されている。アルミニウムは製造業の競争力を支える基盤材料として、重要な役割を担っている。
高いニーズ 再生地金アルミ
アルミニウムは軽くて延性の高い金属だ。その軽さは同じ体積の鉄と比べて3分の1で、高い延性から板や箔(はく)に加工することもできる。地球上では地層にある元素のうち、アルミニウムは8%を占めており、酸素(O)、ケイ素(シリコン=Si)の次に多い元素でもある。
アルミニウムはオーストラリアや中国、ブラジルなどで採掘されたボーキサイトからアルミナ(酸化アルミニウム)を取り出した上で精製し、さらに電解精錬して新地金アルミニウムが作られる。現在国内では新地金製造をしておらず、2016年での新地金アルミニウム製造量のいちばん多い国は中国だ(日本アルミニウム協会発表)。わが国では新地金アルミニウムの100%を海外からの輸入に頼っており、輸入した地金は伸ばして板材や箔材、押し出し材、鍛造品や鋳造品、ダイカスト品として加工している。
この新地金製造までに莫大(ばくだい)なエネルギーを使用する一方で、アルミニウムはリサイクルすることで精製コストやエネルギーを抑えることができる。再生地金製造にかかるエネルギーは、新地金製造にかかるエネルギーの3%ほど。
カスケードリサイクルされるアルミニウムは主に合金であるために、その添加物配合の割合はさまざまだ。その添加物の種類や比率は未知数のため、主に自動車・二輪車のエンジンや鋳造、ダイカスト加工として再利用されている。しかし、国内でリサイクルされた再生地金アルミニウムはその溶解製造体制、内容物も含めた品質管理、検査などを徹底しており、国内外からのニーズ、信頼、評価はともに高い。
一方、純度99%以上の純アルミニウムは遮光性を持たせた菓子袋の内側や、ヨーグルトのフィルムふたなど、食品包装材の一部として、箔形状で使用されている。
構造材 車向け需要伸長
アルミニウムの軽量性を生かして、車両ではアルミニウムを構造材として採用する動きが活発だ。総車体重量を少しでも軽くした方が、走行にかかるエネルギーを低く抑えられるためだ。しかし純アルミニウムは強度面で劣る。強度を確保するために、銅やマグネシウム(Mg)、Siや亜鉛(Zn)などを加えたアルミニウム合金を構造材に採用している。
MgとSiを混ぜた6N01系合金は成形性が高く、鉄道車両に採用されている。アルミニウムとMgを混ぜたものは、Mgの比率によってさまざまな種類があるが、5000系と呼ばれる。腐食に強く、船舶や自動車に採用される。アルミニウムにZn、Mgなどを混ぜたものはアルミニウム合金の中でも高い強度を持ち、航空機などに使用されている。
自動車体へのアルミニウム合金の需要増加は、生産・出荷概況にも表れている。日本アルミニウム協会の「2019年度上期(4―9月)のアルミニウム圧延品の生産・出荷概況」によると板類の自動車用出荷量は9万8041トンと前年同期比11.8%のプラス。6年連続のプラスとなった。アルミニウムのパネル材採用車種増加が大きく寄与した。
一方、缶材出荷量は21万9464トンで同1.8%増、押し出し類に分類される建設材出荷量も23万1735トンと同2.4%増だったのに対し、箔類の電機機械器具類出荷量は2万5040トンで同16.2%減、食料品類出荷量も1万2867トンで同9.3%減となった。電機機器類はコンデンサー向けが大きく減少したことが要因と考えられ、また食品類は海外製品の増加が要因とみられる。
(2019/11/18 05:00)