社説/国立大学の人事給与改革 教員自身が評価の意味を考えよ

(2019/12/3 05:00)

法人化から15年を経た国立大学で、教員の人事・給与改革が進んでいる。個々の大学の特色を生かしつつ、年功序列的な公務員型の処遇からの脱却に取り組んでもらいたい。

文部科学省は、国立大学の評価の指標として「人事・給与マネジメント改革」の進行度合いを取り入れはじめた。研究や指導など教員の業績を適切に評価し、それを処遇に反映させることを求めている。

特に重視しているのは、研究力向上に重要な人材流動性を高める「新・年俸制」の導入だ。この制度は2019年度に始まったもので、教員らの退職金には手をつけず、毎年の給与・賞与での業績連動を高める仕組み。当面は新規採用の教員に適用し、将来は全学で導入するというのが文科省の方針だ。

実は業績評価も年俸制も、仕組みとしては多くの国立大学が導入している。これを文科省が求める制度に改めるには「評価指標をどうするか」「業績給の比率をどの程度にするか」を見直す必要がある。現行の制度では、教員の賞与すべてを業績連動に充当しても年収は2割程度の差にしかならない。

この制度設計は大学の特色を妨げるものではない。「世界」「特色」「地域」に分かれた各大学の主な方向性に加え、学術研究の分野特性によっても評価の基準は異なるだろう。教員らの納得を得ながら、個々の大学が独自に構築すべきものだ。

ただ憂慮すべきは、これらの改革に現場の教員の意識が高くないことだ。大学教員は専門性が高く、研究や教育の活動の自由度が確保できていれば、必ずしも人事や給与に固執しないという人が多い。業績評価に対する受け止め方も企業の従業員とは異なる。研究者として好ましい性質ともいえるが、大学の使命や社会ニーズを無視した行動につながるようでは困る。

国立大学の人事・給与改革は個々の教員のキャリアプランにも関わる。改革を批判するのは容易だが、組織の構成員としての意識を持ち、新しい制度の構築に前向きになることを期待する。

(2019/12/3 05:00)

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