(2019/12/4 05:00)
マイナンバーの本格活用には民間利用を解禁する必要がある。
政府がマイナンバーの利用促進策を急いでいる。2020年度にはマイナンバーカードを持つ人を対象に、買い物などのキャッシュレス決済に使える「マイナポイント」制度を創設。前払いした人に国費で一定のポイントを付与する計画で、実現すれば景気対策の機能も持つことになる。
また21年度からは、マイナンバーカードを健康保険証に代用する仕組みの導入や、自治体等での社会保障関連の手続きをマイナンバーで効率化する制度も始まる。
国が全国民に個人番号を付与し、希望者にカード交付を始めてから間もなく4年になるが、カード発行枚数は2000万枚に届かない。政府は諸施策により、20年7月に3000万―4000万枚へと倍増、23年3月には、ほとんどの住民がカードを保有すると見込んでいる。
個人番号に基づく住民管理は行政の効率向上に必須であり、多くの海外諸国で導入している。普及に向けた政府の努力を促したい。
ただ残念なのは、これらの施策から民間利用という視点が抜け落ちていることである。マイナンバー利用の可否を法律によって認める“ホワイトリスト”型に規定してしまったことが、産業界にとって足かせとなっている。
リクルートキャリアが運営する就活サイト『リクナビ』で、閲覧履歴などの情報を不適切に提供した問題など、企業側に個人情報保護上の課題がある事例もあった。マイナンバーの民間利用を受け入れるには、こうした不安を払拭(ふっしょく)する必要があろう。経団連は10月に「個人データ適正利用経営宣言」を策定し、会員企業に適切な情報利用を呼びかけている。
マイナンバー利用に高すぎるハードルを設定したままでは企業は参入できず、効率的な「データ駆動社会」も実現しない。政府の施策に民間利用の視点を加え、「ソサエティー5・0」の基盤にしてほしい。
(2019/12/4 05:00)
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