産業春秋/日々の備え

(2019/12/12 05:00)

ニュージーランドで火山が噴火し、多くの観光客が死傷した。警戒レベルが引き上げられても“火口体験ツアー”を続けた危機管理の甘さ。日本の備えは大丈夫か。

東京大学名誉教授の武尾実さんは火山噴火予知研究が専門。今年8月の浅間山の小噴火について「火口から浅いところの圧力が下がったことで、深部でのマグマ上昇が促進される可能性もあり注意が必要」と話す。

火山防災では歴史に学ぶことが大事だ。「山鳴りや石臼をひくようなゴーゴーという音がした」―。浅間縄文ミュージアム館長で考古学が専門の堤隆さんは、古文書の記述にある天明大噴火(1783年)の前兆現象に注目する。

現代社会で天明クラスの大噴火が起これば首都圏は降灰によりまひ状態に陥る。浅間山の周辺自治体でつくる火山防災協議会は、大規模噴火に備え広域避難計画の策定に動きだした。武尾さんの経験では「灰が2、3センチメートル積もり雨が降ればオフロード車でも滑って走れない」。

中小企業でもすぐにできる対策がある。機械設備や屋外の電力施設をカバーで覆うだけで火山灰の付着による漏電被害を防止できる。歴史の事実を厳粛に受け止め、想像力をたくましくして日々の備えを怠らないようにしたい。

(2019/12/12 05:00)

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