社説/2020年度政府予算案 歳出削減へ、改革に踏み出せ

(2019/12/23 05:00)

経済成長頼みで歳出拡大に歯止めがかからない。政府は国の厳しい将来像を国民に示し、理解を得る努力をすべきだ。

政府の2020年度予算案は一般会計で102兆6580億円と、当初予算で最大規模となった。高齢化で増加する年金・医療費や高等教育無償化など、社会保障費の拡大に加え、消費増税後の景気対策として19年度に設けた「臨時・特別の措置(臨特)」を継続するためだ。

歳出拡大の中でも、公債依存度を31・7%と前年度当初比0・5ポイント減とし、基礎的財政収支(PB)を9・2兆円の赤字にとどめるなど、苦心の跡は見えるが、借金頼みの予算編成の構図は変わらない。

こうした予算の枠組みを揺るがすのが税収の陰りだ。20年度は消費増税分がフル計上となり、一般会計の税収は63・5兆円と過去最高を見込む。ただ税収の前提となる20年度政府経済見通しは1・4%成長と強気の設定で、達成に不安が残る。近年の税収増傾向にブレーキがかかれば財政は一気に悪化する。

政府は消費税引き上げへの影響や東京五輪後の景気冷え込みに万全を期すために、臨特分として1・8兆円を計上する。経済対策として重要ではあるが、効果の是非は慎重に見ていく必要がある。公共事業や学校耐震化事業など今後は抑制しなければならないだろう。

かつて「第2の予算」と呼ばれた財政投融資が近年、存在感を増していることにも注意する必要がある。20年度予算では成田空港第三滑走路や大阪・関西万博に向けた交通網の整備の新規資金を投入。リスクマネーである産業投資は、新設した産業革新投資機構への1000億円出資など過去最大規模となる。これらも効果を十分に見極めたい。

20年度予算の歳出拡大基調を、次年度に転換させるには、社会保障制度の抜本改革に踏み切ることが不可欠だ。経済成長の基盤は、将来にわたり安心して生活できる確信を得た国民の努力によって築かれる。政府は国民の不安を払拭するためにも、改革へ踏み出すべきだ。

(2019/12/23 05:00)

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