(2019/12/20 05:00)
日立製作所の事業再編は、巨額赤字処理と、事業の選択と集中を同時に進める妙手だ。
日立は三つの再編を同時に発表した。第一は、子会社の日立化成の昭和電工への売却。第二は、医療用の画像診断機器事業の富士フイルムへの売却。そして第三は、三菱重工業と係争していた南アフリカの火力発電プラント建設で、責任を認め和解金を支払い事業撤退することだ。
このうち日立の経営に最も影響を及ぼすのは、南アの問題である。当初、収支均衡を見込んでいたが、工程の乱れから巨額赤字に転落。日立は、この損失処理を先送りしたまま火力プラント事業を三菱重との合弁企業に移管した。三菱重は日立に約7743億円の支払いを求め、対立していた。
海外プラント建設の巨額損失は、米国の原子力発電所で1兆円を超す赤字を出した東芝と類似している。連結当期利益を上回る損失を一気に処理するのは負担が大きすぎた。日立は三菱重との協議に時間をかけつつ、損失に備えた引当金を計上。合弁事業を三菱重に譲渡し、支払いに充当することにした。
新たに計上する和解金2000億円を含めた日立の負担は5000億円を超す。しかし事前準備で現金支払いは1300億円と「最小限のキャッシュアウトで、中期経営計画への影響は軽微」(西山光秋執行役専務兼最高財務責任者)にできた。
並行して日立が目指す事業戦略と関係が遠い、日立化成と画像診断事業の売却で特別利益を計上し、財務面での不安がないことを示した。一歩間違えば経営危機につながりかねない巨額損失を、冷静かつ的確に処理した。ただ、そもそもの問題の発端が日立の事業収支の見通しの甘さにあったことは忘れるべきではない。
日立は事業の選択と集中を加速し、デジタル技術を核とした社会イノベーション事業で世界市場の開拓を進める。リスクの発生要素も多い分野である。収益性の判断に磨きをかけ、撤退した事業を補う新事業を生み出してもらいたい。
(2019/12/20 05:00)
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