(2020/1/31 05:00)
英国が31日、欧州連合(EU)から離脱する。日本は早期に英国と自由貿易協定(FTA)締結へ協議を開始し、日英間の経済活動が停滞しないよう努力してもらいたい。
英国は12月末までは移行期間とし、EU加盟国と同じ待遇が続く。当面、市民生活や企業活動への打撃は回避される。
問題は、EUと英国が今後始めるFTA交渉の行方だ。関税については現状と同じ無関税となるかが焦点だ。工業製品については、相互のサプライチェーンを維持するために無関税となりそうだが、乳製品など一部の農産品は協議が難航する恐れもある。
EUは年内の妥結は困難として、1―2年の延長を視野に入れるが、英国のボリス・ジョンソン首相は年内での交渉打ち切りを明言しており、「合意なき離脱」となる恐れもある。関税が一気に課されれば、英国で生産する製品の輸出には打撃が大きい。
日本は春にも英国とFTA締結へ協議を始める。すでに締結済みの日EU経済連携協定(EPA)が前提となるが、日本から英への自動車関連の関税撤廃、英国産の乳製品やサケの関税撤廃などが協議項目となる。
日本企業では、すでにホンダが英国生産からの撤退を決め、日産自動車も生産車種の見直しを始めている。関税の行方次第で、日系メーカーの欧州戦略は変更を余儀なくされる。
課題は同時並行で行われる米国と英国とのFTA交渉が厳しいものとなる可能性があることだ。医療サービスや農産品などで難航も予想され、日本との交渉が後回しになる恐れもある。英国には通商交渉に精通した人材の不足も指摘されている。日本政府は日本の産業界が不利とならないよう英国側との協議に臨んでもらいたい。
英国のEU離脱の影響は現時点では見通せない。さらに欧州には不安要素もある。EUの経済的支柱であるドイツの経済停滞や右派勢力の台頭など、単一市場を揺るがす事態も想定される。自由貿易体制堅持へ、連携強化に努めてもらいたい。
(2020/1/31 05:00)
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