(2020/1/30 05:00)
2020年の春季労使交渉(春闘)が始まった。賃金のあり方だけでなく、大手と中小企業の労働者の格差の問題にも注目したい。
昨年までの「官製春闘」は様相が変わりつつある。経営側にはベースアップ(ベア)に否定的な意見が濃厚だ。労働側は要求を下ろしてはいないが、環境変化を感じ取っている。大手企業ではベアの水準維持が焦点になろう。
一方、この数年の大手のベアによって中小企業との賃金格差が問題になっている。連合のまとめによると、大手(従業員1000人以上)と中小(同10―99人)の高卒労働者の賃金差は30歳で2万1100円、40歳で5万3400円と、年齢が上がるほど拡大する。また中小の間でも、賃金制度を設けていない企業の賃金の伸びが低いという結果が示されている。
春闘は大手企業とその組合との労使協議が中心。中小の労働者は協議の場すら満足にないのが実情だ。従業員99人以下の企業で働く労働者の労働組合組織率は0・8%。もちろん個別には高賃金で報いている企業もあるが、全体として見れば賃金水準は決して高くない。
昨今の人手不足は中小企業の経営者に賃金引き上げの必要性を痛感させた。賃上げの実現は企業存続にも関わる。従業員の目線に立った議論も欠かすべきではない。
むろん中長期には、自社の収益力を高めることが重要だ。そのなかで大手企業などとのサプライチェーンを形成する企業の場合、長年の取引慣行のなかで発注元から過度な値下げ要求がされていないかなど、取引適正化に取り組むことも重要だろう。経済産業省も不適切な事例には厳正に対応する方針を示している。
大手企業の労使が先導する春闘だが、中小企業が取り残されては、日本全体のデフレ脱却もおぼつかない。政府は取引環境のような個別労使で解決できない課題の解決や、生産性向上の支援などで中小が賃上げに取り組める環境整備を後押ししてもらいたい。
(2020/1/30 05:00)
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