(2020/2/3 05:00)
「お姉ちゃんと私は同じ家の子なのに、いつも私は“お下がり”ばかり。不公平だわ」―。今どきの家庭で着回しはないかもしれないが、似たような不平不満はあるのではないか。
『同一労働同一賃金』を訴える人の話を聞くと、そんなことを感じる。親の愛情に違いはなくとも『同一家庭同一待遇』が難しい事情がある。企業だって同じ。給与体系は経営者の思いだけでなく複雑な要素で成り立っている。
現代のビジネスマンがこの問題に関心を寄せるのは、定年後の再雇用が当たり前になったからに違いない。再雇用者は「同じ仕事をしているのに」と不満。しかし経営側には、ローンや子育てに追われる中堅社員に報いて成果を上げてもらいたいという事情がある。
他部門への異動や転勤、業務の監督責任を求められる正社員の労働が、本当に短時間勤務や再雇用者と同じなのか。何が『同一』かがあいまいなままに『同一賃金』だけを要求するのは、正しい主張には思えない。
冒頭の姉妹のお姉ちゃんだって「末っ子の方が何かと得しているのに」と思っているかもしれない。万人を納得させる基準はない。間もなく本格化する春の労使交渉でも、個別企業で事情をじっくり話し合ってもらいたい。
(2020/2/3 05:00)