社説/東京五輪延期が現実味 IOCは早期に方針を示せ

(2020/3/24 05:00)

東京五輪・パラリンピックの延期が現実味を帯びてきた。新型コロナウイルスがパンデミック(世界的大流行)となるなかで、やむをえない措置だ。アスリートや産業界が、次に向かって動き出せるよう、国際オリンピック委員会(IOC)は、早期に方針を明確にすべきだ。

延期となるなら、1年後か2年後か4年後なのかを示す必要がある。人が不安に陥るのは、先が見通せない時だ。方針が決まれば、それに向かって気持ちを切り替えて取り組むこともできる。IOCは「4週間以内に結論を出す」としているが、不安な状態を長引かせるのは得策ではない。すでに水面下で検討はしているはずで、なるべく早期に公表するべきだ。

五輪は過去にも戦争などで中止となった例はあるが、延期は初めて。さまざまなルール整備が必要だ。アスリートにとっては、延期が何年になり、その結果代表選考がどうなるのかが、気になるところだろう。

産業界にとっても、経済的な損失は大きい。大会スポンサー契約をしている企業は、さまざまな関連キャンペーンの変更を余儀なくされる。その費用は自社ですべて負担するのか、IOCも一部は補填するのか。

観光産業やイベント事業者は、ホテルの建設やイベントの準備など、五輪に向けてさまざまな投資を行っている。何百万泊分のホテル予約がキャンセルとなれば、その損失は莫大(ばくだい)だ。観光・イベント関連の事業者は中小・零細企業が多く、たちまち資金繰りに窮するところもあるだろう。

政府は延期が経済に及ぼす影響を見据え、早期に対策を打ち出す必要がある。新型コロナウイルスの実体経済への影響に関するヒアリングを実施しているが、五輪延期は最もインパクトが大きい。検討中の新たな経済対策も、延期を踏まえた手厚い施策が必要だろう。

IOCは「中止は議題にならない」と明言している。パンデミックを全世界の努力で収束させ、アスリートや観客が、健康で安全に五輪に参加できる日が来ることを望みたい。

(2020/3/24 05:00)

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