(2020/4/9 05:00)
新型コロナウイルスの感染拡大によって、産業界では在宅勤務が進み、否が応でもテレワークに対応せざるを得ない状況となってしまった。現時点で大きな支障は出ていないものの、緊急事態宣言が出された今、通常業務への復帰にはまだ時間がかかりそう。各社とも試行錯誤が続く。(各面に関連記事、最終面に「深層断面」)
トヨタ自動車は東京本社と名古屋オフィスで勤務する従業員を原則在宅勤務とした。東京本社で本格導入したのは、小池百合子東京都知事が緊急会見した翌日の3月26日で、対象者は1650人。2月末から導入していた神戸製鋼所も、東京本社の全従業員1000人を対象としたのは同30日から。川崎重工業の東京本社本社部門(約160人)、IHIの京浜地区の事務所部門も同30日から在宅勤務としている。
インフラ企業でも導入が進む。NTT東日本は、すでに2017年7月に在宅勤務の利用上限(月8回)を撤廃。3月26日に東京圏に勤務か在住する従業員を対象に、必要最小限の業務以外は原則在宅勤務とした。電力各社や都市ガス各社もそろって導入。30日導入の大阪ガスは最低限の出社にとどめるため各事業部門ごとにローテーションを組み、8日時点で約700人が在宅勤務だ。
各社ともテレビ会議やウェブ会議などを活用するも、社内外のコミュニケーション不足を問題点に挙げる企業が多い。加えて「通信容量などネットワーク環境を(自宅で)いかに確保するかが課題」(トヨタ)と技術面の課題が残るが、「ネットワーク環境の能力を順次引き上げている」(キオクシアホールディングス)と、導入拡大とともに環境は整いつつある。ルネサスエレクトロニクスは、以前からペーパーレス化などを進めていたこともあって「間接人員への導入はスムーズだった」という。楽天も海外との連絡や、育児や介護で出社が難しい従業員向けの環境を整えており、大きな影響は出ていない。
「仕事を効率的に進められるようになったとの声も」(トヨタ)と、働き方改革への期待も高まる。ただ一方で生産性や労務管理、従業員の精神面への影響を懸念する声もあり、長期化への懸念が出始めた。オークマは3月下旬から事務部門を中心に導入し、今のところ支障はないが「長期化すればわからない」と警戒する。
(2020/4/9 05:00)