社説/コロナ禍の自然災害対策 分散避難への態勢づくり急げ

(2020/5/29 05:00)

新型コロナウイルスの長期化が予想される中で水害や地震から住民の安全をどう守るか。自治体は流行が繰り返す事態も想定し、備えを急ぎたい。

避難所は、感染症対策では最も避けなければならない「3密」(密閉、密集、密接)になりやすい。避難と感染防止の両立には専門家の指導に基づく避難所の衛生管理強化や、個人宅、企業、ホテルなどへの分散避難、自治体による住民の安否確認や健康管理がカギになる。

1995年の阪神・淡路大震災では避難所でインフルエンザが流行し、多数の関連死を招いた。また2016年の熊本地震ではノロウイルスの集団感染も発生。コロナ禍の避難では感染対策の優劣が帰趨(きすう)を分ける。

岩手県は東日本大震災の教訓から、市町村や保健所の後方支援のため内科医を中心に約60人の「岩手感染制御支援チーム」を常設。災害時は避難所を巡回し衛生面の調査や助言を行う。

千葉県鴨川市はコロナ禍の4月13日、大雨に備えて34世帯80人に避難勧告を出した。3地区の公民館に避難所を開設し、入り口で検温と保健師による問診を行い、体調が優れない住民を収容する個室を用意した。また避難者は間隔を2メートル以上開け、マスク着用、消毒、定期的な換気を徹底する態勢を整えた。

市の担当者は「トイレなどの動線を完全に分けるのは難しい。避難所は公民館より広い学校の体育館を優先し、知人宅、親戚宅などへの分散避難を進める必要がある」と課題をあげる。

感染症禍では外部からの支援が得にくいため、自治体と住民が一体になって自力で数日間持ちこたえる態勢を整えておく必要がある。特に避難所内は感染を防ぐため避難者の体調に応じた分離が決め手になる。

河川氾らんが差し迫っている事態にもかかわらず、感染を恐れて避難せず洪水に巻き込まれる。こうした本末転倒による惨事を招かないためにも、自治体は可能な限り避難先を増やし、避難所の安全性ついて普段から住民の理解と信頼を得ておきたい。企業も会議室の提供など協力を惜しまないでほしい。

(2020/5/29 05:00)

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