(2020/8/4 05:00)
国際法に反する状態を放置し、日本企業に実害が及べば、日韓関係は大きく傷つく。韓国側が賢明な判断で対処することを訴えたい。
韓国最高裁が戦時中の元徴用工への賠償を日本製鉄に命じた判決で、資産差し押さえの通達書類が届いたとみなす「公示送達」の手続きが4日に発効する。これにより韓国側の訴訟代理人は、差し押さえた資産を現金化できるようになる。
日本政府は徴用工問題について、1965年(昭40)の日韓請求権協定によって「完全かつ最終的に解決済み」との立場だ。韓国政府も同じ考えだったが、最高裁判決以後、問題解決を放置している。韓国側の事情だけで国家間の約束を反故(ほご)にする行為は、国際法に照らしても許されない。
日本側には韓国の判決を受け入れる考えはなく、仮に日本企業の資産が一方的に現金化された場合には対抗措置を講ずることを示唆している。友好国との関係ではあり得ないもので、日韓関係が一段と困難になるのは避けられない。
韓国国内には徴用工を人道問題と見なし、日本に譲歩を求める世論がある。愚かな戦争の中で、多くの若者が労働にかり出されたのは事実だ。労働環境の過酷さや賃金支払いの有無は、さまざまな資料があり断定できない。両国政府は、そうした状況を踏まえた上で協定を結び、日本側が事実上の賠償金を支払うことで国交を正常化した。この歴史は書き換えられない。
韓国政府が今に至るも自国の国民に十分な説明をせず、司法手続きを傍観していることは賢明な判断とは言えない。韓国の責任において対処方針を決め、必要なら日本に協力を求めるべきものだ。
日本企業の資産の差し押さえが効力を持っても、実際の現金化までは時間を要するとみられる。韓国政府が指導力を発揮する最後のチャンスだ。
両国の産業界にとって隣国は重要な市場であり、また事業パートナーでもある。日韓関係を破局させぬよう、韓国側の英断を切に望む。
(2020/8/4 05:00)
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