社説/副業・兼業容認へ 労働の安全網整備との両立を

(2020/8/6 05:00)

企業で社員の副業・兼業を解禁する動きが出てきた。個人の意欲や能力向上は、会社にとってもプラスになるとの判断からだ。課題は労働時間などの労務管理のあり方だ。

企業がこれまで副業・兼業に否定的な要因として、労働基準法で本業と副業の労働時間を合算した管理が求められていたことがある。副業で自社業務に割く労働時間が減る一方、会社側が労働時間を把握する追加の手間がかかり、割に合わないという発想があった。

企業にも意識の変化が見られる。経済同友会の調査で、副業・兼業を容認する企業は、2016年は17・7%だったが、19年は38・7%と倍増した。認めることを検討しているも26・2%あり、全体の6割強が前向きに捉えていることが分かった。

政府は成長戦略実行計画のなかで「人生100年時代を見据え、働く人の目線に立って、兼業・副業の環境整備を行うことが急務である」とし、労働時間の管理ルールの整備を進める。副業の労働時間把握へ労働者から企業への自己申告制度を設け、労働者側が申告しない場合は、超過労働が発生しても企業の責任は問わないとする方針だ。

副業で働く場合は自己責任で労働時間を管理するという考え方だ。欧州でも同様の制度があり、企業にとっては副業容認に踏み切る後押しとなるだろう。

一方で、労働者にとっての雇用のセーフティーネットは強固であるべきだ。現行の雇用保険は1社で1週間当たり20時間以上の就労が加入の条件だが、兼業の場合どの会社でも条件に満たない可能性がある。制度の見直しが必要だ。労働者災害補償保険制度は、法改正により9月から本業・副業の収入を合算した額の労災保険を給付する仕組みが始まる。新制度を周知させ、給付の漏れを防ぎたい。

多様な働き方は時代が求めるものだ。ただ、過去には所得や待遇が不安定な非正規労働者を大量に生み出した例もある。労働環境を守りながら、個人の自己実現や所得の増加をはかる仕組みへと、制度を充実させていきたい。

(2020/8/6 05:00)

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