(2020/8/11 05:00)
日刊工業新聞社が実施した研究開発(R&D)アンケート(有効回答238社)によると、2020年度の研究開発費計画額を回答した102社の合計は、19年度実績比1.9%増となり、微増ながら11年連続増加となった。新型コロナウイルス感染症拡大の状況下でも投資意欲は堅調だ。ただ、コロナの影響で本年度業績見通しを公表しない企業も多く、6割の企業が研究開発費計画を「未定」「非公表」などとして金額を示さなかった。一方、新型コロナ対策として研究開発部門にテレワーク(在宅勤務)を今回導入した企業は223社中約4割の89社。「以前から導入している」と回答した124社を含めると、95%以上の企業が研究開発部門でテレワークを活用したことが分かった。(20年度R&Dアンケート(1)、20年度R&Dアンケート(2)に詳細)
■製薬系、持続的成長へ積極投資
研究開発費の企業別順位では、トヨタ自動車が1兆1000億円と19年連続の首位。「08年のリーマン・ショック時にすべての活動を止めた結果、復活に時間がかかったことが反省点。構造改革を進めることで前年並みの研究開発費を維持する計画」(トヨタ)とした。
4位はアステラス製薬、5位の第一三共、6位の大塚ホールディングス(HD)、8位のエーザイと上位10社の約半数が、新薬開発に多くの費用と期間がかかる製薬企業で占められた。売上高比率もそろって2ケタを記録した。
「買収に伴う研究開発費を通年で計上することなどが増加原因」(アステラス製薬)、「持続的成長を実現すべく積極的な投資を行う」(小野薬品工業)と業界の環境を反映した。
しかし、19年度6位だった製薬最大手の武田薬品工業は「今期計画は非開示」と回答。そのほか19年度10位以内だったホンダ、日産自動車、デンソー、ソニー、パナソニックのいずれも20年度の計画数値を調査時点で公表しなかった。
全体で今期計画額を回答しなかった企業は、19年度の56社から136社と2・4倍に増えた。コロナ禍で研究開発環境を見通せない企業が多い状況を今回の回答社数は浮き彫りにした。
研究開発部門のテレワーク導入は「今回導入した」が4割で「以前から導入している」の5割が上回った。「導入を検討・計画している」「現在は検討・計画はない」との回答は合わせて4・4%にとどまっており、在宅勤務が研究開発部門でも浸透している。
研究開発人材の向こう数年を見通した研究開発人員数を「増やす」と回答した企業は19年度比13・9ポイント減の28・6%となり、企業の採用意欲が落ちている現状を浮き彫りにした。
また研究職の女性活躍推進について聞いたところ、64%の企業が女性採用増を「意識している」と答えた。だが現状では研究職の女性比率が「1割以下」(57・7%)にとどまっていることが明らかになった。
アンケートは1988年度から実施し、今年は33回目。6月中旬から7月上旬にかけて調査した。
(2020/8/11 05:00)