(2020/8/11 05:00)
新型コロナウイルス感染症が企業の投資意欲にも波及している。事業環境は厳しいが、中長期の競争力を見据え、成長につながる投資は続けるべきだ。
日本政策投資銀行は2020年度の大企業の設備投資計画調査で、国内設備投資が9年ぶりにマイナスになるとの見通しを示した。
20年度の国内設備投資の計画値は前年度比3・9%増だが、実績値は計画値から10ポイントほど下ぶれることがほとんどで、9年ぶりにマイナスになる公算が大きい。一般機械、卸売り・小売りの減少が目立つ。一般機械は新型コロナによる世界的な新車需要の落ち込みで自動車向けの投資見送りが響く。卸売り・小売りはスーパーやコンビニの新規出店の抑制傾向に加え、新型コロナで減少する見込み。
気がかりなのは、投資意欲の弱さが長期に及ぶ可能性だ。同調査によると新型コロナの影響で3割の企業が設備投資を見送った。このうち8割は、「事態の収束後に投資を実施する可能性がある」としたが、現状では早期の収束は見込みにくい。
製造業の向こう3年程度の中期的な国内の供給能力について、「強化する」との回答が減少し、「縮小する」が増えた。設備投資の動機は能力増強以外に補修や省力化などもあるが、供給能力の強化に後ろ向きな傾向は懸念材料だ。
一方で堅調さもうかがえる。自動車など輸送用機械は計画値は同2・2%増と伸びは鈍いが、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)対応の投資が目立つ。非鉄金属は同33・6%増、化学は同10・7%増で電池材料案件が押し上げる。成長分野への投資意欲は旺盛だ。
SMBC日興証券によると、6日までに開示された東証1部上場企業の20年4―6月期の当期利益は前年同期比7割強減。多くの企業にとって新型コロナは逆風で、設備投資を厳選する傾向は強まらざるを得ない。だが、生産性向上や成長分野の育成など、競争力につながる投資は怠ってはなるまい。投資案件の目利き力が問われている。
(2020/8/11 05:00)
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