産業春秋／東京外し

政府は観光業支援「ＧｏＴｏトラベル」キャンペーンで外出を促す一方、地方自治体のトップの多くが「県をまたぐ外出は控えてほしい」という。二律背反する要請にとまどいながらお盆のお墓参りを見送った方も多かっただろう。

東京都は支援対象から除外されたため、都民にはより強い外出自粛のプレッシャーがかかった。地方で東京ナンバーの車に非難の目を向ける風潮もあった。私も都民として外出を控え、お墓参りと旅行に縁のない夏を過ごした。

ただ、自宅で過ごすだけだと気がめいる。都内で外出気分を楽しめないかと考え、果物狩りを思いついた。これなら外出と同時に果物を味わうことができ、家族も喜ぶ。都内でブルーベリー狩りができる観光農園があることも分かった。

ところが農園に電話すると、今年は３密回避のため摘み取りを禁止し、パック販売だけだという。残念だが行くのを断念した。

政府はＧｏＴｏトラベルの東京除外の解除を検討するという。たとえ解除が実現しても、都民が道府県の方から受け入れられる雰囲気がなければ、楽しさも半減するに違いない。間もなく秋の行楽シーズンが始まる。出かける喜びを心から味わいたい。