(2020/10/6 05:00)
新型コロナウイルス感染拡大という未曽有の事態のなかで、経済の再生と財政再建を両立させる税のあり方を考える、極めて困難な議論が始まる。菅義偉政権にとっても正念場である。
2021年度の税制改正に関する各省庁の要望が出そろった。経済産業省は、企業の研究開発費の一部を法人税額から特別控除する制度の拡充と延長を要望した。企業の成長を促し、国際競争力を得るには、研究開発やデジタル化によるイノベーション創出が欠かせないとの判断だ。
中小企業の集約化促進に係る税制措置の創設も要望した。企業の統合・集約を税制面から支援する。自動車関連では、21年4月末となっているエコカー減税の延長を要望した。
国土交通省は固定資産税について、コロナ禍前に算定した地価に基づく評価替えで税負担が増えないように要望。総務省はコロナ禍で需要増が見込まれるサテライトオフィスの整備に必要な設備導入費用を、法人税から税額控除することを求めた。
いずれもコロナ禍で打撃を受けた企業や経済への負担を軽減し、成長軌道に戻すための措置となる。政府・与党は要望を踏まえ、12月までに21年度税制改正をとりまとめる。
課題は政府が取り組む財政健全化との整合性である。コロナ対策で20年度の新規国債の発行額は90兆円に達する。一方で法人税は企業の業績悪化により、減収が避けられない見通しだ。
コロナ禍で財政健全化への取り組みは挫折した。急増する社会保障費の抑制など、国民に負担を求める施策から目を背けるわけにはいかない。消費税は所得税や法人税に比べ、景気による税収の変動が小さく、安定財源とみなされている。しかし菅首相は10年間は引き上げないと表明した。
コロナ禍で拡大した財政支出をすべて先送りすることは、将来世代の負担増に直結する。当面はコロナ対策として、財政支出や減税措置も必要だが、中期の課題として、あるべき税収確保策への議論にも真っ正面から取り組まなければならない。
(2020/10/6 05:00)
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