社説/スパコン「富岳」V2達成 技術革新へ、さらに進化を

(2020/11/20 05:00)

理化学研究所(理研)と富士通が共同で開発を進めるスーパーコンピューター「富岳」が処理速度を競う世界ランキング「トップ500」で2期連続で1位の座を射止めた。“V2”達成を高く評価したい。

コロナ禍で生産活動が制約される中で、富岳は開発途上の試験運用において、飛沫(ひまつ)の可視化やシミュレーションで成果を上げ、ウイルス感染予防に貢献するなど、日本のモノづくり力を世界に知らしめた。

今回は、432筐(きょう)体(ラック)に15万8976台のコンピューターを格納したフルスペック構成となり、1秒当たりの計算速度が約44・2京回(京は1兆の1万倍)と、2位に比べて約3倍の大差をつけた。

産業アプリケーション(応用ソフト)の処理速度を評価する「HPCG」や人工知能(AI)の計算性能を示す「HPL―AI」、省エネ性能を示す「Graph500」も各1位を堅持した。

これら“4冠”だけでなく、実行効率の高さでも成果をあげた。実行効率とは中央演算処理装置(CPU)の性能を無駄なく効率よく使っていることを示す指標。今回の実行効率は82・3%と、前回6月時点での記録を1・43ポイント上回った。

処理速度だけを競うなら、力業でCPUの数を増やせばよい。富岳は実行効率にこだわり、開発目標に据える「省電力で使い勝手の良いコンピューター」にふさわしい性能を実現した。

一般にスパコンは研究開発用途で世間とはかけ離れたイメージが強いが、富岳は飛沫シミュレーションを通して、我々の安心・安全を守る身近な存在であることを実証した。ただ、その能力はまだ一部に過ぎない。

わが国が目指す超スマート社会「ソサエティー5・0」の実現に向けて、富岳が担う役割は大きく、真価が問われるのは本格運用に入る2021年度からだ。富岳の技術を採用した商用スパコンもすでに製品投入されている。これら富岳の開発で培った技術を面として広げ、わが国のイノベーションを加速させていかなければならない。

(2020/11/20 05:00)

総合2のニュース一覧

おすすめコンテンツ

「現場のプロ」×「DXリーダー」を育てる 決定版 学び直しのカイゼン全書

「現場のプロ」×「DXリーダー」を育てる 決定版 学び直しのカイゼン全書

2025年度版 技術士第二次試験「建設部門」<必須科目>論文対策キーワード

2025年度版 技術士第二次試験「建設部門」<必須科目>論文対策キーワード

技術士第二次試験「総合技術監理部門」択一式問題150選&論文試験対策 第3版

技術士第二次試験「総合技術監理部門」択一式問題150選&論文試験対策 第3版

GD&T(幾何公差設計法)活用術

GD&T(幾何公差設計法)活用術

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

NCプログラムの基礎〜マシニングセンタ編 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

金属加工シリーズ 研削加工の基礎 上巻

Journagram→ Journagramとは

ご存知ですか?記事のご利用について

カレンダーから探す

閲覧ランキング
  • 今日
  • 今週

ソーシャルメディア

電子版からのお知らせ

日刊工業新聞社トピックス

セミナースケジュール

イベントスケジュール

もっと見る

PR

おすすめの本・雑誌・DVD

ニュースイッチ

企業リリース Powered by PR TIMES

大規模自然災害時の臨時ID発行はこちら

日刊工業新聞社関連サイト・サービス

マイクリップ機能は会員限定サービスです。

有料購読会員は最大300件の記事を保存することができます。

ログイン