社説/水素社会へ連携 官民の英知を集め、実用化急げ

(2020/12/16 05:00)

水素の製造から貯蔵、輸送、利用まで、あらゆる段階で技術開発を加速し、水素社会の早期実現を目指したい。

トヨタ自動車や岩谷産業をはじめ、自動車メーカー、金融機関、ガス、保険、電力、化学、物流など幅広い業種の88社が参画する「水素バリューチェーン推進協議会」が発足した。

水素社会の早期実現への課題解決を目指し、実証事業や普及策、規制緩和への提言活動を行っていく。同時に金融機関と組んで資金供給の仕組みづくりに重点を置いた活動も展開する。

水素利用の最大の課題は、価格をいかに下げるかにある。現在の調達コストは1ノルマル立方メートル当たり100円程度とみられるが、燃料電池車では同30円を下回らないと採算がとれず、鉄鋼業界は同10円を切らなければ利用は難しいとされる。

政府は2030年ごろの商用化を目途に水素コストを同30円、将来的に同20円とする目標を掲げる。調達コストの低減は需要の大幅な拡大が前提となる。協議会は、発電や燃料電池車に加え、鉄道や船舶など大量消費が見込める用途分野の開拓を促す役割を果たしてほしい。

水素の製造方法は、石炭などの化石燃料から抽出する方法や再生可能エネルギーの余剰電力を使った水の電気分解など数種類ある。適切な生産技術を選定し、開発の方向性を合わせていく必要がある。需要拡大を踏まえれば、輸入も進めるべきだろう。大量の水素を安全に低コストで輸送できる技術の確立も急ぎたい。

脱炭素化の切り札になるグリーン水素の普及には、再エネ価格の低廉化が不可欠。市場競争の導入や蓄電池の高性能・低価格化など、余剰電力で水素を製造しやすい環境整備も必要だ。

世界で脱炭素化への取り組みが加速している。商用化で後れを取れば水素活用に必要な国際ルールづくりで海外勢に主導権を握られかねない。

官は民間の取り組みが加速するよう、技術やインフラ整備へ大胆な資金支援を実施するとともに、規制緩和にも柔軟に対応し開発を支えてもらいたい。

(2020/12/16 05:00)

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