(2021/1/21 05:00)
日本に居住するすべての人に短期間でワクチン接種を実行する前代未聞の取り組みが始まる。接種体制の整備には、産業界の協力も不可欠だ。
菅義偉首相は河野太郎規制改革担当相をワクチン担当相に起用した。省庁横断の課題に取り組み、会員制交流サイト(SNS)で若者への発信力もある河野氏の手腕に期待した。
首相は早ければ2月末には接種を開始すると表明した。承認申請した米ファイザーと独ビオンテックなどの臨床試験結果を踏まえ、審査を進める方針。
接種は医療従事者が最優先で、次いで高齢者、基礎疾患のある人、その後全住民の順。子どもや妊婦を対象外にするかは今後決める。市区町村から送られる接種券を元に、原則居住地域で接種を受ける。
厚生労働省が作成した接種体制では、ファイザーのワクチンはマイナス75度C、モデルナはマイナス20度C前後での保管が必要。ファイザーの場合、一つの容器(バイアル)に6回分が充填されており、接種会場に配送する最小数量単位は195バイアル(1170回接種分)。室温で融解し生理食塩液で希釈して使うが、6時間しか保存できない。
こうした条件を考えると、医療機関に加え、コロナ感染防止も考慮した大規模の会場を確保した集団接種が効率的。市区町村は会場の用意や、接種対象者の人数や時間を把握し、接種を施す医療従事者を手配するなどの緻密な準備が必要となる。
ワクチンに加え、専用の冷凍庫や保管用のドライアイスなどは全量を国が一括して調達し、自治体に配分する計画。
すでに国内の複数の冷凍庫メーカーや保冷ボックスメーカーが増産に入った。物流面でも保管倉庫やトラックなど民間のコールドチェーンのノウハウが活用できる。産業界も全面的に協力し、接種体制を整えたい。
前例のない取り組みに最も重要なのは、国民の理解である。ワクチンへ漠然とした不安を感じる国民はまだまだ多い。先行する諸外国の事例も参考に、情報を適切に開示し、丁寧に意義を説明してもらいたい。
(2021/1/21 05:00)
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