社説/震災10年 福島の未来 若者が希望を持てる復興に

(2021/3/12 05:00)

福島の再生には担い手の存在が不可欠だ。若者が安心して未来を託せる場所となるよう息の長い取り組みを続けたい。

東日本大震災の地震と津波、そして東京電力福島第一原子力発電所の事故で、福島は大きな被害を受けた。

大震災から10年が経て、道路や鉄道などの自然災害に関するインフラ整備はおおむね終了した。原発事故による避難指示区域は、当初県の12%に及んだが、現在は2・4%にまで縮小した。しかし、双葉町の大部分は原則立ち入り禁止で、帰還した住民の割合も大熊町は2・8%、浪江町は9・3%と依然として厳しい状況にある。

国は帰還困難区域全体の解除方針を示していない。具体的な計画がなければ、避難住民が決断を下せないのは当然だろう。4月から始まる第2期復興・再生期間において、しっかりと方向性を示してもらいたい。

安心して暮らせる街づくりには、産業の振興が欠かせない。政府が主導する「福島イノベーションコースト構想」は大きな希望となろう。被害が大きかった沿岸の浜通り地区に、廃炉研究、ロボット、再生可能エネルギー、国際教育研究などの拠点配置する。

世界最大級の水素製造能力を有する「福島水素エネルギー研究フィールド」が浪江町で稼働した。100%CO2フリーで生産する水素は、カーボン・ニュートラル実現の切り札と期待される。南相馬市には「福島ロボットテストフィールド」が開設した。50ヘクタールという大規模なロボットの実証実験場は、世界にも例を見ない規模だ。

国内外の研究者が集い、最先端技術の開発を進め、実用化させるには、環境整備や大胆な規制緩和が必要だ。そしてそこで生まれた技術を、現地に立地する中小・ベンチャー企業が受け取り、産業として地域に根付かせるところまで育成するのが真のゴールである。

すでに未来に夢を持ち、現地に移住する若者も増えている。福島の復興なくして、日本の再生はない。すべての国民が共有すべき思いだ。

(2021/3/12 05:00)

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