社説/震災10年 険しい廃炉への道 “工程ありき”に縛られるな

(2021/3/11 05:00)

東京電力福島第一原子力発電所の廃炉へ向けた道のりは、一層険しくなる。技術的にも難易度が高い局面に突入し、予測困難な事態も起こりえる。国と東電には、工程に縛られない臨機応変な対応を求めたい。

かつて防護服を身にまとい、バスで走り抜けた2号機、3号機の建屋周辺。今では一般作業服姿で間近に見上げられるまでに放射線量は軽減した。使用済み燃料プールからの燃料取り出しは、1号機から4号機の約7割までが完了。廃炉が着実に進むさまを実感する。

だが、これらは最長40年での完了を目指す廃炉工程の序盤にすぎない。最難関とされる原子炉内で溶け落ちた燃料デブリの取り出し作業は今後、段階的に始まり、その先には原子炉施設の解体も待ち受ける。

世界的にも例をみない大がかりな廃炉作業だけに、事前の工程通りに進まない局面も予想される。燃料取り出し用の設備を設置し準備を進めながらもトラブルに見舞われたり、直近でも原子炉の内部調査のためのカメラ投入中、圧力低下が生じるケースもあった。

そもそも燃料デブリの取り出しは機器開発の遅れから大幅な遅延を余儀なくされている。技術難易度が高まれば高まるほど、こうした場面への遭遇も予想されるが、たとえ歩みは遅くとも、東電には、その都度リスク要因を取り除き安全な作業となるよう進めてもらいたい。

他方、もはや先送りが許されないのは、燃料デブリを冷却する水から放射性物質を取り除いた「処理水」の問題である。政府は適切なタイミングで方針を決定する見通しだが、時間的猶予は少ない。保管用タンクが物理的に廃炉作業の妨げになっているのはもとより、その存在が、福島の未来を描くことを困難にしているためだ。国の報告書は「海洋放出の方がより確実に処分を実施できる」とするが、風評被害への疑念は強い。

地域の未来、廃炉の最終形に直結する重要局面にさしかかる今だからこそ、国は関係者が一丸となって難題に立ち向かえるよう前面に立つべきだ。

(2021/3/11 05:00)

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