産業春秋／赤崎勇さんを悼む

ノーベル賞を受賞した青色発光ダイオード（ＬＥＤ）の開発は、何度も失敗を重ねて成し遂げた赤崎勇さんの執念のたまものだった。謙虚で、誠実な人柄。故に、研究に傾ける熱意は並大抵ではない。多くの研究者が敬遠した窒化ガリウム（ＧａＮ）と辛抱強く向き合い、２０世紀中の開発は不可能とされた“常識”を覆した。

青色ＬＥＤのインパクトは、産業界での実用的な貢献にとどまらなかった。急速な普及に伴う多額の特許料収入が注目された。特許係争もあった。研究者の評価はいかにあるべきかという点でも一石を投じた人だった。

孤高の人という印象が強いが、研究室のチームワークを大切にした。教え子で、ノーベル賞を共同受賞した天野浩名古屋大学教授は「人間としてあるべき姿を教えていただいた」と感謝する。

若き研究者たちの指導にあたった名大、名城大学では、赤崎さんの思いを引き継ぎ、さらなる発展を目指した研究が続いている。後進の育成は赤崎さんの隠れた功績だ。

世界中の研究者が見切りをつけたＧａＮにこだわり、研究を続けた当時の心境を表現した「我ひとり荒野を行く」―。赤崎さんの踏み出した一歩は、社会の発展に続く道になった。