(2021/5/25 05:00)
中世の人々は、月食を凶兆ととらえていたらしい。夜空に浮かぶ月を愛(め)で、月明かりに頼る暮らしでは、原因がわからない月の急変を良からぬことの前兆と感じたのは無理もない。
あす26日は、全国で貴重な皆既月食が観測できそうだ。地球に最接近した「スーパームーン」が地球の影に入り赤銅色に変わる。今でこそ天体ショーとして楽しめるが、鎌倉時代の歴史書『吾妻鏡』には月をむしばむ「月蝕」とある。
科学万能の現代でも、原因不明の現象を恐れる心理は変わらない。さすがに日本では月食を凶兆ととらえることはなくなったが、自然界には科学的に解明されていないことがあまたある。
新型コロナウイルスとの闘いは、感染力の強い変異株が優勢となり、新たな段階に入った。緊急事態宣言により人流を抑制しても、感染拡大に歯止めがかからない。変異株の急拡大は現代の月蝕をみる思いだ。
国立天文台によると、スーパームーンの皆既月食を日本で観測するのは1997年以来24年ぶり。次回は2033年10月8日になるという。人類がコロナを克服し、一人でも多くが天体ショーと再会できるように―。今回の皆既月食は吉兆と願わずにはいられない。
(2021/5/25 05:00)
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