(2021/7/13 05:00)
30年以上にわたり繰り広げられてきた法人税引き下げ競争に終止符を打つ意義は大きい。
イタリアのベネチアで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、国際法人課税の導入で合意し、閉幕した。各国に課税自主権がある中での合意で「100年ぶりの歴史的な変化」(麻生太郎財務相)となる。
法人税の「最低税率を15%以上」にするとともに工場などの拠点がなくてもサービスの利用者がいれば課税できる「デジタル課税」を導入する。売上高200億ユーロ(約2兆6000億円)超かつ利益率10%超の多国籍企業、100社程度が対象。これまで国境を越えて利益をあげてきた巨大IT企業など多国籍企業の「課税逃れ」を防ぐことができる。
1980年代ごろから各国は企業誘致のために法人税率を競って引き下げてきた。英国の法人税率は80年代は50%超だったが現在は19%。その英国も約50年ぶりに法人税率を引き上げ、2023年に25%にする方針。日本も80年代には40%を超えていたが、国・地方の法人実効税率は29・74%となっている。
歴史的な合意に至った背景には新型コロナウイルス感染症拡大の影響がある。感染対策として大規模な財政出動が余儀なくされ、各国の財政は急速に悪化した。今回のG20の共同声明で、世界経済の回復に向けて「全ての利用可能な政策手段を用いるとの決意を再確認する」と明記した。新型コロナ収束まで大規模な財政出動は避けられない中、「財政の持続可能性の維持」が、新しい国際法人課税のルールづくりを後押しした。
今回のG20の合意は1日に開かれた実務レベルの経済協力開発機構(OECD)の大枠合意を閣僚レベルで承認した格好。既に132カ国・地域が大枠合意しており、詳細な実施計画については10月のG20での最終合意を目指す。
まだ低税率国のアイルランドなどは賛同していない。デジタル課税の配分割合も調整が残る。各国で議論を深め、歴史的な合意へ導くことを期待する。
(2021/7/13 05:00)
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