(2021/7/14 05:00)
経済成長の加速に向け、政府が能動的役割を果たすべきだ。
政府は6月に閣議決定した成長戦略実行計画の中に、「公正取引委員会による唱導の強化」という項目を盛り込んだ。「唱導」とは提言を意味する役所用語だという。同時に公取委の予算と定員を拡充し、外部人材も活用しながら競争環境整備を進める構想だ。
典型的な規制官庁である公取委に、経済成長を促す役割を期待するのは珍しい。従来の政府の経済運営は、古い規制を緩和して経済活動の活性化を期待する一方、寡占やカルテル行為を取り締まる「事後規制型」を目指してきた。
これに対し欧米の競争政策当局は、新規参入の促進やデジタル化、エネルギー政策などで政府機関や民間団体に競争を活発化するよう積極的に働きかけている。こうした役割を「公取委にも果たしてもらいたい」(内閣府)という。小さいながらも重要な政策転換だ。
企業活動の規制に集中してきた公取委にとって、新たな役割は荷が重いかもしれない。担当者には、大胆な発想転換が求められよう。
2020年の成長戦略で政府は、キャッシュレス環境の整備として、金融機関間の決済手数料や振込手数料の引き下げを盛り込んだ。規制権限を握る金融当局がこの方針を銀行界に働きかけた結果として、効果が徐々に我々の目に触れる形で現れてきている。
市場開放や規制緩和だけで企業活動が活性化するとは限らない。成長戦略が新たなビジョンを掲げても、その実現には予想以上に時間がかっているのが実情だ。公的規制を活用して社会変革を加速する手法は、欧米に多くの例がある。
例えばデジタル化では、電子届け出の義務化や押印・書面の禁止、手数料の廃止や簡略化など政府が主導可能な分野がある。現状では自治体ごとにバラバラな方法を国が規制し、標準化するだけでも効果がある。企業活動を取り締まるのではなく、効率化する規制のあり方を当局が模索してもらいたい。
(2021/7/14 05:00)
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